【知って得するマメ知識】
債権移転説に立つ通説からは、求償権の消滅は原債権を消滅させることになる。また、最高裁昭和61 年判決は、原債権は求償権が消滅したときはこれによって当然に消滅するとする。
これらの通説・判例によると、弁済・満足により消滅した場合だけでなく、時効消滅した場合も含まれるものと解されており、これが実務上において最も大きな影響を受けているものの一つであり、困った問題ともなっているとされている。なぜならば、代位弁済により移転を受けた代位根抵当権がある場合、求償権の時効が早くきて被担保債権である原債権より先に時効消滅すると、代位根抵当権も消滅してしまうということになるからである。
この点に関し、高橋眞教授は、「求償権が時効消滅した場合、原債権は消滅していないにもかかわらず、代位権の行使が否定されるかという問題を考えるとき、担保としての『附従性』ありとすればこれを肯定すべきことになる。しかし債務者は代位がなければ原債権の請求を受けるべきところ、代位した者の求償権の消滅によってこれを免れることになるが、これは適切か」という問題を提起された。そして求償権と原債権との関係につき、最高裁昭和61 年判決において、原債権が求償権に付従するとしている点につき、「成立・行使・消滅の全体にわたって、完全な『附従性』を有しておらず、求償権の範囲でのみ原債権を行使し得るという『成立に関する付従性』が認められるに過ぎない」として、「時効の規律については、原債権・求償権とも期間・起算点についてはそれぞれ固有の規律に服する」から、「原債権と求償権とは『単純競合』として考えるのが妥当であり、一方が時効消滅したとしても他方を行使することについては妨げない」とされる。したがって、「最高裁昭和61 年判決の『求償権が消滅したときはこれによって当然に消滅し』という文は、求償権が満足されずに消滅した場合を含むものと解すべきではない」とされる。
以上のとおり、最高裁昭和61 年判決により第2の命題としての原債権は求償権に付従しているとする「付従的競合」論によれば、求償権が消滅すれば、原債権・担保権も消滅することになると考えられていた。しかし、単純競合説によれば、求償権が実際に弁済を受け満足された場合には、原債権・担保権は消滅するが、時効消滅したとしても、原債権・担保権は消滅せず、担保権を行使できるとするのはこれまでにない考え方であり、画期的なものである。本来、弁済者代位は、代位弁済をした者の利益のために認められた制度である。にもかかわらず、先にも触れたように高橋教授が、「債務者は代位がなければ原債権の請求を受けるべきところ、代位
した者の求償権の消滅によってこれを免れることになる」といった、むしろ、代位弁済者に利益をもたらすどころか、弊害をもたらすことになる「付従的競合」論について、根本的に再検討をする必要性のあることを意味しているといえる。